弱塩基の電離平衡

弱塩基の電離平衡について、弱塩基の電離度の求め方、phの求め方について解説します。
メジャーな弱塩基であるアンモニアの電離平衡を例にとります。
基本の式は弱酸の時と同じですが、酸である$H^+$のかわりに弱塩基である$OH^-$が電離するので、phの求め方のみ違います。

アンモニアは以下のように電離します。

$NH_3 + H_2O \iff NH_4^+ + OH^-$

アンモニアが$c(mol/L)$あるとし、電離度を$α$とすると、それぞれの生じるモル数は

$NH_3 + H_2O \iff NH_4^+ + OH^-$
(電離前) $c[NH_3] 0[NH_4^+] 0[OH^-]$
(変化量) $-cα[NH_3] +cα[NH_4^+] +cα[OH^-]$

注:ここで、入試問題では希薄溶液(水が大量)を扱うので、$H_2O$一定値として考えるので、電離定数の一部として扱います。
つまり、電離定数を扱う際$H_2O$は無視して考えます。

(電離前)+(変化量)より

(平衡時) $c(1 - α)[NH_3] +cα[NH_4^+] +cα[OH^-]$

電離定数

電離定数を$Kb$とすると$Kb$は弱酸の時と同様以下のように求められます、これは覚える必要があります。
電離する前の物質(式の左側)が分母、電離した後の物質(式の右辺)をかけたものが分子にきます。

$Kb = \dfrac{[NH_4^+][OH^-]}{[NH_3]}$

これに平衡時のモル濃度を当てはめて

$Kb = \dfrac{cα \times cα}{c(1 - α)}$

$Kb = \dfrac{cα^2}{1 - α}$

ここで弱塩基の電離度は非常に小さい値のため、$1 - α = 1$とします。
すると

$Kb \fallingdotseq cα^2 - ①$

電離度を求める

電離度$α$は①を変形することで求めます。

$α^2 \fallingdotseq \dfrac{Kb}{c}$

$α > 0$より

$α \fallingdotseq \sqrt{ \dfrac{Kb}{c} } - ②$

$OH^-$のモル数を求める

電離の式で定義したように、$[OH^-] = cα$
求めた$α$の値を代入して、

$[OH^-] \fallingdotseq c \sqrt{ \dfrac{Kb}{c} }$

$c = \sqrt{c^2}$より、$c$をルートの中に入れます。

$[OH^-] \fallingdotseq \sqrt{cKb}$

$[OH^-]$からphを求める

弱酸と違い$[H^+]$のモル濃度を直接求められないので、$[OH^-]$から水のイオン積を利用して、
phを求める形になります。

水のイオン積を$kw$とすると、

$kw = [OH^-][H^+] = 1 \times 10^{-14}$
$[H^+] \fallingdotseq \dfrac{1 \times 10^{-14}}{OH^-}$
$[H^+] \fallingdotseq \dfrac{1 \times 10^{-14}}{\sqrt{cKb}}$

初版:2022/10/14

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